人食い鬼の娘

昔むかし、大阪の山奥に、人食い鬼が住んでいました

さあ、今日はお前が初めて人を襲って喰う日だ

 

人食い鬼のボスが、娘に言います

いやや

人間を食べるなんてできひん

いややいやや

ほら、人間が通りかかった

早く行きなさい

いやや!

お前は人食い鬼だぞ!

早く行きなさい!

若者の前に落ちる娘鬼

うわっ

人食い鬼だ!

めそめそ

いやや

人間なんか食べたない

なんだ

鬼と言ってもかわいい娘じゃないか

 

若者は提案をする

 

私と腕相撲をしないか?

もし私が勝ったら、二度と人を襲わないと約束しておくれ

実は人食い鬼村で、1番強い娘鬼

腕相撲は大好き

 

「する!」

心配で見守る父親鬼

ん~~~~

 

仲間の鬼たちより強い!

応援に夢中で、しだいに前に進み出る父親鬼

若者の力は尋常でなく、吹っ飛びかける

大丈夫?

「あ・・」

 

支えてくれた若者にポッ

娘をはなさんかい!

ええい

見つめ合うな!

今度はわしが相手じゃ

綱引きで勝負だ!!!

しかしぐんぐん、綱を引き寄せる若者

おい

お前ら!

助太刀しろ!

 

どこからかあらわれる手下鬼

しかし強い若者

ついに鬼たちを負かす

わしの負けじゃ

お前さまはたいした人間じゃ

約束を守ってください

二度と人を襲わないと

わかった

約束は守る

良かった

これでみんな安心して暮らせる

山奥に帰っていく鬼たち

福娘様の好意で描かせていただいた

その後の人食い鬼の娘です

「また会えるだろうか」



「え?」



ふりかえると



夕日よりも赤く染まった若者の頬



「会いたい」



娘鬼の頬も染まっていく



父親鬼が

「またわしと勝負したいのか?

よし!わしはいつでもいいぞ!」

一気に上機嫌になり



ガハハととどろきのような笑い声をあげる
「手下ども!さっそく鬼村に帰って鍛錬だ!」

「ええ~~~~」

 

「あの山をもう少し上がった所に、チビ鬼どもの遊び場がある

わしに会いたければ、チビどもに伝言すればいい」



がはは



山々を揺らせる大きな笑い声がしだいに遠ざかっていく



でも若者には

「また・・」



娘鬼の鈴をころがしたような小さなささやきが



いつまでも耳に優しく熱く残っていた







・・・・

次の朝



昨夜は若者の姿が心から離れず

眠れなくて





「会いたい」「でも・・人間の村にはきれいな人がたくさんいるやろし


わざわざ人食い鬼の娘になんか会いに来てくれへんかも」



涙があふれる





その時



「姉ちゃん!」



チビ鬼が走ってきて



娘鬼の髪と同じ赤い花の枝に付いた手紙をわたす

「人間の兄ちゃんが、渡してって」





震える指で手紙を開く



「会いたい



あの峠でまた会えぬだろうか?



夕刻待っています



会えるまで毎日待ちます」

 

温かい涙が

ポタポタ





まだ夕刻には早いのに



髪を梳いたり着物の埃をはらったり







その様子を

最初は怒りの血管を浮き上がらせてみていた父親鬼



でも幸せそうな娘鬼に



しだいに優しい表情になって



「あの若者は婿養子に来てくれるだろか?」

早、心が先走る







夕刻より少し早い時間





2人はあの峠で再会し

 

そして





2人が無事に結ばれるかは



別の物語で







お終い

2013年に描かせていただいた年賀状です

人食い鬼の娘のアニメ動画です