あなたの腕の中で見る夢  金色の夢リオ編

 

 

 

 

冷静沈着で知られるコグニグダ(コグニ)=シャルスノー伯爵はこの夜珍しいことに困り果てていた。


彼を困らせるのは、まだ11歳の少女、姉が亡くなり最近引き

取った姪っ子だ。



普段聞き分けのいいおとなしいレアが、昼間、兄と買い物に行ったときにハンカチを失くしたらしく、夜になって探しに行くという。



夜のクリオゲナ星はかなり寒い。

氷の星ナンジェリナのすぐ隣に位置しているせいだろう。


星の周りは人工のエアフィルターで囲まれているが雨の降る今夜冷えがピシピシむき出しの顔をたたく。


オートマの傘で守られていて濡れることはないが、このまま外をウロウロして風邪をひかせたくなかった。



「もうあきらめなさい。 ハンカチならいくらでも買ってあげるから」

「だって、ママが刺繍してくれた三色菫のレースのハンカチだもの。レアのためにママがつくってくれたのに!」

大きな瞳から涙がぽろぽろあふれだす。

「泣くな、な?」


困った。

女の子という生き物はコグニにはさっぱりわからない。

彼は女嫌いの独身主義で知られている。





「三色菫なら店のものに刺繍してもらえばいいから、な?」

「お店の人のはきれいすぎるもん!」


レアのママが不器用な手でしてくれたあの三色すみれとは違う。



その時、「このハンカチでは代わりにならない?」

建物の前を掃除していた少女が駆け寄ってきた。


印象に残る赤い髪、まだ幼さの残る大きな瞳がネオンでキラキラしている。



ハンカチを見たレアが「あっ」とかすかな声を上げる。

「ママのハンカチとそっくり」

三色スミレの刺繍が同じようにデコボコしているし、それにかすかな薔薇の香水の匂いまで一緒。

わずかにレースの模様が違うだけ。


「これね、姉に貰ったハンカチなの。 でも大切にしてくれるならあげる」

「いいの?お姉ちゃんのなのに」

「うん。」


ハンカチを受け取りレアの顔に笑顔が広がる。

「ありがとう、お姉ちゃん!」




心底からホッとしたコグニはふところから財布を取り出す。

「助かるよ、お金はいくら渡せばいい?」

赤毛の少女が顔を上げる。




「お金なんていらないわ」歌うような優しい声。



目と目が合ったとき、時が止まった。

「?」 胸が高鳴るが、その理由がコグニにはわからない。



「もう行かなきゃ、じゃあね」

「ありがとう、お姉ちゃん!」



少女の入って行った建物を見て呆然とする。


「娼館・・・」



清純そうな少女と娼館が結びつかなくて立ちすくむ叔父を不思議そうにレアが覗き込む。


「あのお姉ちゃん好き」

ハッとして「さあ帰ろう。 風邪を引く」


コグニは少女の面影を振り切るように歩き出した。





あなたの腕の中で見る夢1

 

多少ハードなので注意して閲覧して下さい。