たそがれくり男(おシリーズ

たそがれくり男(お)14

愛と嫉妬の燃える夜

 

後ろにもたれかかる気配にくり男はハッとする。

「寂しそうな顔をすんな。あんたは俺が守る」

 

年下のお庭番、狂犬・・ぬいが、くり男の顔をはさむように両腕を壁におく。

甘く、熱い、燃える瞳に見覚えがある気がした。

 

記憶の底に閉じこめた無士蔵。

 

そして朝蜘蛛。

 

「ぬい?」

無意識に栗姿に戻る

「チッ、いい場面なのに栗顔になるなよ」

「????」

「でもそんな栗顔のあんたもかわいく見えてきたから、俺も病気だぜ」

 

若い燃える情熱のまま、いきなり畳に押し倒す。

「愛と言う名の病気だ」

「愛~~~???」

「静かにしねえとチビ共が起きるぜ。それに早くしないと我儘凶暴な主人が帰ってくる」

ボー然とするくり男から着物を剥ぎ取る。

「早くする??ちょっと待て!俺は男だ!」

「今さら何を言ってやがる!男を次々手玉に取る魔性の栗のくせに!」

「誰だ、それは!」

 

太ももにあたるものに鳥肌がたつ。

ジタバタ暴れたその時・・・

 

「ぎゃーーー!」

ぬいがのけぞる。

 

「?」

その背中を見て、くり男も

「ぎゃ~~~!」

 

忍者の定番の武器、手裏剣が突き刺さっているではないか。

 

「その人から離れないと殺しますよ」

暗闇から響く声。

 

「ひっ」

弟たちの方に逃げるぬい。

 

暗闇に目を凝らし・・徐々に見えてくる姿。

 

「朝蜘蛛・・」

かっての優しい瞳は深く澱んでいる。

それが、嫉妬の暗い炎だとは、無邪気なくり男にはわからなかった。

 

 

続く

 

たそがれくり男(お)13むし坊、兄と父

 

愛しいくり男から離れたむし坊は、父の持つ別宅の豪華な回廊を、ズンズン歩いていた。

 


「よう」

「!」

ふいに憎き恋のライバルである男が現れる

無士蔵 、むし坊の母違いの兄・・。

 


「あんたも呼ばれたのかよ」

「弟にあんた呼ばわりされたくないね。くそどちび」

 


2人の間を稲妻が走る。

 


「まあいい。行こうぜ。くそ親父が、急に呼び出してきた方が気になる」

 


「ああ、くだらない話を聞いて早く、くり男の所へ戻らないと。

  傍にいるのが狂犬じゃ頼りない」

「朝蜘蛛も付けている。あいつは安全だ」

 


むっ!「くり男をなれなれしくあいつと呼ぶな!」

 


「何を言う。俺とくり男はお前とよりよっぽど・・」

 


御簾の向こうに男の気配がただよう。

 


「俺とくり男のいい仲は後で聞かせてやる」ニヤッ


(何だ?含むいい方しやがって!ただの宿敵の関係じゃないのか?)

負のオーラを溢れ出させるむし坊

 

その耳に、久しぶりに聞く父親の声が聞こえる。

 

 

 

「久しぶりだな、お前たち」

 


「今さら捨て置いて親子ごっこもないだろ?要件をサッサと言え」

 


「無士蔵、虫之介(むし坊本名!)、お前たちのどちらかに跡を継がせることにした」

 


「は?跡継ぎはいるだろ?長兄が」

「死んだのか?」

 

 

 

「生きとるわい」

 


「後を継げなくなるような問題でも起こしたのか?」

 


ニヤッとほくそ笑む気配が御簾の向こうからただよう

「いいや。あいつは必要以上に血を好む所はあるがそんなことは問題にはしていない。あいつを養子に欲しいと言う話があってな。

詳しくは今の段階では言えないが・・とにかく跡継ぎはお前たちのどちらかに決める」

 

 「訳がわからねえ、養子って何だ?皇族にでもやるのか?」ケッとむし坊

 

「それで俺たちのどちらかを跡継ぎにするって?

今さらなんだ。俺はなる気はないぜ」


「僕もならない」

 


「お前たち、栗頭の中年男に言い寄っておるそうだな」

 


ぎく


「跡継ぎになったものには、その男を妻にする許可を与える(くり男の意思は・・)」

 


「!?男同士だぞ?子供も出来ない」

「くり男を妻に出来る?」

 


「ふふふ、実はな、わが家には、男に子を孕ませる秘伝がつたわっておる」

  (ファンタジーなのでお許し下さい)


「そんなのがあるのか?」

目を見開く2人。 

 


(・・子供を作ればあいつは俺だけのもの)

(くり男に僕の子供を・・(ポッ))むし坊・・・あなたがまだ子供・・・

 

「わしはどちらが栗頭を手に入れるか楽しみに密偵にさぐらせておく。

 それから・・・お前たちの兄も何やら栗男を探っているらしいから気を付けるんだな」




「あいつが?」チッ「あいつも中年男好きか?くそっ執念深いあいつが・・やっかいだな」

「いや、あんたも十分執念深いって」つっこむむし坊だった。












屋敷を辞した後、酒を呑む2人。

(むし坊・・・まだ子供じゃ・・)


ほろ酔いの無士蔵が唐突に話しだす。

「俺がくり男に初めて会ったのはお前と同じ14の時だ」







続く

たそがれくり男(お)衝撃のダイナマイトボンバー

 

 

 

 

 

「いつから洗ってないんだ;」

共同の井戸から汲んできた水でチビ達とお庭番の着物を洗うくり男。

水がたちまち真っ黒になる。

 

キャアキャア手伝って水遊びになっているチビ達。

「あいつらのあんなに笑う顔久しぶりだ。母さんの生きていた時以来だ」

遠い目のお庭番。

 

「もしかして洗濯も?」

「あいつらもまだあんなふうに笑えたんだなあ」わざとらしく遠い目

(お母さんの生きていた時以来洗ってないんだな・・)

 

「ポチ、ハチ、柴、土佐、秋田、下着も脱げ。お庭番殿もだ」

「え~」「褌も?」「お母ちゃんの生きてた時以来だ~」

(やっぱり)

「名前呼ばれるのも久しぶりだよ」「うん、兄ちゃんはチビ共とかお前らとしか呼ばないもん」「さっきくり男に名前効かれてとっさに出てこなかったもん」

 

じろっとお庭番を見る。

 

「忍びの世界じゃ名前は隠すもんなんだ」あわてて言い訳するお庭番。

「俺がズボラなわけじゃないぞ」

「お前の名も秘密なのか?」

「え?」

「お庭番殿も」

「殿はいらない。俺も名前なんて呼ばれたことがない。

昔は狂犬と呼ぶ奴もいたけど」

「狂犬?本名か?」

「ぬい」

「ぬい」繰り返すくり男

「犬族を反対にしただけのぬい。ふざけた名前だろ」

「俺はいい名だと思う」

ドキ「そうか?」

「ああ」

 

 

キャアキャア騒ぐチビ達を寝かしつける。

布団で寝るのは久しぶりだと喜ぶ子供たちにホロリ。

 

 

夜も更けて・・。

まだ帰ってこないむし坊を心配して眠れないくり男。

 

(なんだ?このドキドキは。

栗だぞ!俺は変態か?栗頭親父にドキドキするなんて)

同じく眠れず、窓の外を眺めるくり男を隠し見る。

 

月の光がくり男をぼんやり浮き上がらせる

「!」

くり男が人の姿に。

 

クリ色の髪、心配そうなクリクリの目。

(これが人型のくり男!)

 

むし坊を心配するくり男は

年下のお庭番のダイナマイトなハートに火を付けてしまったとは、思いもしなかった。

 

 

続く

 

 

 

ついにくり男が劇場公開されることになりました!
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・・・・・かも。


反転ごっこ2枚目は素直に栗顔と人顔を反転させました。

期待した方すいません^-^;
くり男の顔は普通のおっさんです。
くり男を押さえつけているのはもちろんむし坊です。

こういう機会がなかったら最終回まで顔は出さなかったかも^0^

最初くり男とむし坊だけ描くつもりが、周りにくり男ラブの男たちをちらしたくなって、どつぼにはまりこみました~~~>”<;
むし坊の衣装はかぶき者のイメージです^ω^

恋心に火がついて

 

重々しい駕籠がむし坊を待つ。

「俺を捨てた親父が今頃なんだって?」

 

「捨てていませんよ。お庭番の俺を付けているんだから」

「はずれ忍者のお前と、どうにも使いようのない手下どもをな」

「ともかくとても大切な話だそうで、中の兄上も呼ばれています」

 

「中の兄上・・・くり男を狙っている蛇のように執念深いあいつが・・」

 

 

話しがわからずきょとんとするくり男に

「親父の所へ行ってくる。すぐに戻るから長屋で待っていろ」

「親父って・・・ちゃんと戻ってくるのか?」寂しそうなくり男にキュン♡

 

「かわいいくり男の所へ戻ってくるに決まっているだろ」

ブチュウ。

お庭番を見て「お前はくり男が他の男に攫われないように見張ってろ」

 

 

 

「いてっ、もういいって!こんな傷なめて治す」

「馬鹿。ひどい怪我じゃないか。誰にされたんだ?」

 

「・・・」

「朝蜘蛛か?」

「へえ・・。あんたには甘い顔しか見せてなかったのにわかるのか?」

 

「俺だって長年剣客をしていたんだ。

あいつは俺には優しかったが・・忍びの目をしていた。

任務なら何も考えず人を殺す目だ」

 

「まあな。弟達が止めなきゃ殺されてた。

あいつはチビが苦手だからひるんだ所へ、大殿の使いが来たから逃げられた」

 

ちょろちょろ

走り廻る幼児たち

 

「お庭番殿の手下とはこの子たちのことだったのか?」

「ああ。五つ子だ」

 

「栗~。俺栗ごはん食べたい」

「こらっ、失礼だぞ、助丸」

「美味しそう」

 

「はは、すぐに鍋が出来るからな。おにぎり握ってやるから先に喰うか?」

 

「うん!」

「くり男優しい」

「くり男好きー。兄ちゃんはすぐぶつもん」

 

あっという間にくり男になつく弟たち

 

見つめるお庭番の胸に一瞬、思いがけない未来予想図が浮かぶ。

非常な忍びの道をぬけ、弟たちとくり男と優しくすごす穏やかな日常。

 

 

ぶんぶん首を振る「俺は栗頭の男なんか好きにならねえぞ!」

 

「?何ばか言ってるんだ?当たり前だろ;」

あきれるくり男。

 

しかしその時、すでに目の前の男が自分への恋心に目覚めたとは思いもしなかった。

 

 

続く

 

江戸へ・久利久井無士蔵(クリクイムシゾウ)登場とぐり太再登場!

 

ガラガラ

むし坊の乳母車を引くくり男はプリプリ。

 

「怒るなよ~^^くり男が勝手に思い込んでたんだから。」

「言ってくれたらいいだろ!」

「だってさ、言ったら育ててくれないかと思ったんだよ」

「俺が育てなくてもあの忍者が付いてたんだろ?」

「お庭番。あんなやつより(ひどい)くり男がいいんだ!1目ぼれ♡」

 

ふくれていたくり男の頬が真っ赤に染まる。

「赤ん坊のくせに何言ってんだ!」

「見てろよ!成虫になったら真っ先に犯す!」

 

くり男の背中を冷たい汗が流れる。

「捨てて行こうかな・・・」

「何だと!」

 

ガラガラ

「どこへ行くんだ?人が増えてきたけど」

風景もお茶屋があったりにぎわってきた。

 

「江戸だ。今まで忍者に狙われていると思ってたから人を避けてきたが、どうやら勘違いだったようだし」じろっ

(でもおかしいな・・俺は故郷が燃えたとき、複数の忍者の気配を感じたんだが・・)

「江戸に住むのか?」

「しばらく住んでもいいな。俺が剣客をしていた時の長屋が空いていたら」

「・・・・」

 

 

「くり男は江戸へ向かっているんだな?」

「はい、無士蔵様。弟君も一緒です」

 

「・・・どうやって、姑息なあいつからくり男を奪うか・・楽しみだな・・」

ニッ

「俺の付けた噛み後にたっぷり唾をつけてやらないとな。お前は俺のものだとはっきり教えてやる。」

 

「・・・・」

「この刀でお前の堅い皮をむいて俺だけのものにしてやる」

 

 

「こいつならとなりの長屋にずっと前に住んでいたぜ」

「本当か!」

「へい、こんな栗頭忘れねえ」

 

くり男を探して旅を続けていたぐり太。

(きっとあいつの性格なら懐かしい場所に戻るはずだ)

「絶対見つけ出す!くり男!」

 

 

「もうすぐ俺の住んでいた長屋だ」

 

シュッ!

突然あらわれるお庭番。

その姿は無残;

 

「うわっ!お・・お庭番殿か?」

「坊ちゃん、父上がお呼びです」

「くそじじいが?」

 

 

続く

むし坊、忍ぶ恋の稲妻爆発

 

「名残惜しいですが、ここでしばしの別れといたしましょう・・。

あなたには見えなくても俺はあなたの傍にずっといます」

 

切ない瞳で離れると「おさらば!」

シュッ!

 

消える朝蜘蛛

 

「・・・・・」

 

「何してる!すぐに追え!ぶっ殺せ!!」

「はあ?追い付きませんよ。それにあいつ、俺より強いもん」

「俺に喰われるかあいつを血祭りにあげるかだ!!!手下共もつかって殺れ!」

「手下って・・あいつらを?無理じゃね?」

 

クワッ!

「あ~あ~、わかりましたよ;(やだよ、このご主人・・)

シュッ

 

「くり男!」

ハッとするくり男。

 

「何であんな変態蜘蛛に接吻させるんだ!!!」

「むし坊・・お前・・」

「すきだらけだ!」

 

「・・・お前、坊ちゃんてなんだ? あのお前の言うことを聞く忍者男は誰だ?

あの方とか言っていたのは誰だ?」

 

「僕はくり男の付けてくれた名前のむし坊だよ。過去は捨てた」

「過去・・お前・・俺の故郷の森で産まれたんじゃないのか?」

「違うよ」キッパリ。

がーーーーん

 

固まるくり男に「真実は1つだけ。僕がくり男を愛してるってことだけだ!

もう忍ぶ恋をするのは疲れた。くり男は僕だけのものだ!」

飛び付き口づけの嵐をお見舞いする。

 

「ちょ・・むし坊!・・あっ!」

 

ーーーーーー自主規制ーーーーー

 

 

くったりするくり男を寝かせる。

「くそっ!幼虫の姿じゃここまでしか出来ない!

・・・・でも僕だって近いうちに成虫に変化できるはず!!その時にはくり男を完全に僕の物にしてやる!!」

くり男の寝顔に誓うむし坊。

 

     続く

恋に落ちた忍者

サッと服をまとってくり男を抱き上げる。

「ん~?むにゃにゃ」

 

強い殺意が洞窟に立ち込める。

 

シュバッ!

大口を開けて襲い掛かる黄色い塊を、瀬戸際で避ける朝蜘蛛。

 

尻から出した糸で天井からぶら下がる。

 

 

 

「む・・むし坊?」

「くり男!」

 

「どうやら別れの時のようですね。」

「朝蜘蛛?」

「いずれあなたを主人の所へ連れて行きますが、今は難しいようです」

 

むし坊と、そのお庭番を見下ろす。

「その方がお利口だぜ。このぼっちゃんは恋に狂っているからな。あの方の息子だけあって・・」

じろっ!

「言葉がすぎました;」

 

「あの方?ぼっちゃん?」

きょとんとするくり男に自分の編んだ服を着せながら

「当分、陰ながら見守っていますよ」

「朝蜘蛛・・一緒に旅はできないのか?」

 

「くり男!」

 

「・・・あなたの傍にいすぎたら・・主人を裏切ってしまいそうだ。」

つらそうにくり男を見つめ

「報われぬ恋に落ちたバカな俺に、せめて別れのキスをさせてください」

「えっ!」

 

「このくそ蜘蛛!」

チュウ

 

固まるくり男とむし坊。

 

チュウチュウチュウ

 

「愛しい人♡」

 

「いつまでしとる~~~絶対喰う!」わなわな震えるむし坊。

 

「それ以上うちの坊ちゃんを刺激するな~~~」

(みんなあの栗顔のどこがいいんだ~;クレイジーだー!!!)

頭を抱えるお庭番だった。

 

   続く

 

 

たそがれくり男「この糸で絡めたい」

  

「美味しい」

「良かった。 おかわりしてくださいね。」

忍者は編み棒をカチカチいわせている。

 

「何を作っているんだ?」

「くり男殿の服ですよ。

溺れたとき流されてしまったから」

「親切だな」

「主人の大切な方ですから」

 

「・・・主人って誰だ? 」

「すいません、守備義務がありますので」心底すまなさそうに苦笑いをする。

 

「お前の名は?」

「・・・・」

「すまん。それも秘密か?」

「いえ、名前など修行に出された幼いころから呼ばれることはなかったので。

たしか、朝蜘蛛と」

 

「朝蜘蛛か。いい名だ」

「?」

「朝の蜘蛛は縁起がいいと言われている。親御さんに愛されていたんだな」

「くり男殿・・」

 

ふっと照れたように編み針を急がせる朝蜘蛛。

シュルシュル 糸がどんどん出てくる。

 

(うん?糸はどこから・・)

 

「!!!」

朝蜘蛛のお尻から伸びている糸。

 

「驚きました?私は蜘蛛族です」

ポン

巨大蜘蛛に。

 

一瞬驚くが、「そうか。」

「気持ち悪くないんですか?」

「?どうして蜘蛛が気持ち悪い?お前はいいやつだ。

それで十分だろ」

 

朝蜘蛛の頬がポッと染まる。

「くり男殿・・・」

 

シュルシュル

糸がくり男をからめ捕る。

「朝蜘蛛?」

「主人にとられるのがおしくなってしまいそうだ」

1人ごとのようにささやく。

 

 

「もう遅いので今夜は寝ましょう。虫坊様は大丈夫ですよ」

 

「虫坊になぜ様を付ける?なぜ大丈夫と言える?

1番わからないのは・・・」

「はい?」

「何で腕枕で寝なきゃあいけない?!」

「かわいい人だ」

朝蜘蛛の頬が夜目にも赤い。

「;」

 

その時かすかな物音に朝蜘蛛の目がギラッと光った。

 

 

       続く

たそがれくり男「むし坊の秘密」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「離せ!お前らは栗一族の仇! 長老様の仇!」

突き飛ばす。

「あっ」ふいに眩暈が・・。

「くり男殿!」倒れかけた体を優しく抱き留められる。

「は・・離せ」

もがくが、力が入らない。

「溺れて体力を消耗されたのだから暴れないで下さい」

「くっ!」

「それに・・、あなたの仇は俺じゃない。 俺の仕える方でもありませんよ」

「えっ?」

ポッポッと雨が頬を濡らす。

「近くに洞窟があります。 行きましょう」

抱き上げられる。

「でも、むし坊が心配だ!」

苦笑い「大丈夫ですよ、あの方は」

「?」

 

 

「庭番!どこにいる!」叫ぶむし坊。

 

「へいへい」

木の上から顔を出す男。

「すぐにくり男を助けに行け!ばか!」

 

「くり男殿はあなた様の兄上のお庭番が助けてましたよ。」

「兄上の?くそっ!兄上もくり男を狙っているんだ! ばかっ!早く手下のものと追えっ!」

「もう追ってますってば;」(あんな栗のどこがいいのかねえ。 兄上殿もわが君も一応将軍家の落しだねなのに」

 

 

「くり男殿、温かいものが出来ましたよ」

 

(どういうことだ? 俺の村を襲ったのが忍者じゃないんなら。 いったい誰が?」

 

 

 

 

「早く僕をくり男の所へ連れて行け!」

「へいへい」

 

 

            続く

 

たそがれくり男(お)5・優しい声、冷たい唇 

(ぐり太・・)ぼんやりとしながら川原で水を汲もうとしたくり男は、足を滑らしてしまう。

「くり男!」

(むし坊!だめだ、俺に何かあったらむし坊が!)

しかし体はどんどん流されていく。

「くり男~!!!」

 

 

誰かが俺を呼んでいる。

冷たい唇に、唇がふさがれる。

空気が吹き込まれ・・体が楽になる。

(むし坊? いや、ぐり太?)

「しっかりしてください」

低くて優しい声がいたわるように言う。

 

重ぐるしいまぶたがゆっくりと開いた。

 

「大丈夫ですか? くり男殿」

一瞬ぼんやりしてから突然気づく。

「お前、忍者!」

 

 

 

   続く

 

 

新たな旅立ちへ
新たな旅立ちへ

それぞれの旅路へ

 

朝の光とともに、悲劇は訪れた。

 

「大変だ、長老が何者かに襲われた!」

「長老!」

「頭に穴が開いているぞ!」

「しかし・・、村の入り口には、毎晩、屈強な見張りがいる。 

ドングリ喰い虫は入ってこれないはずだ。 それこそ忍者か物の怪ぐらいしか入れん」

 

(忍者!?)

ハッとするくり男。

(まさかあいつらが長老を!)

 「長老~!!!」

長老の亡骸を抱き涙を流す友の姿に、唇をかみしめる。

(俺がこの村へ来たせいで!)

 

手早く旅支度にかかる。

「行こう、むし坊」

「うん!」

そっと村を去る2人。

 

峠まで来て村を振り返る。

「ぐり太・・」

「くりおー」

「むし坊、また2人っきりだ。  行こう」

むし坊をそっと抱きしめるくり男の目に涙が・・。

 

 

葬儀を終えた後、ようやくくり男の姿が見えないことに気付いたぐり太。

くり男、どこだ!?」

畳の上に置手紙

「あのばか!」

峠まで走るがくり男の姿はすでにない。

「くり男ー!」

むなしく山にコダマする。

 

次の朝。

村から旅立つぐり太。

「待ってろよ、必ずお前を捕まえてみせる。

その時はもうぐずぐずしねえ。

心も体も俺のものだ。 覚悟しとけよ、くり男!」

 

男2人の、新たな旅立ちが始まる。

 

 

             続く

 

次回、急展開、謎の忍者が姿を現す!

 

 

2月15日
2月15日

たそがれくり男(お)3・夜が明けるまでの間は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな。ふとんが1組しかないんだ」

「悪くなんかないさ、昔はよくこうやって2人で寝たな。なつかしい」

「これからはいつもこうだ。明日、ドングリ族の長老に話をしよう。」

「ぐり太、気持ちは嬉しいが・・」

「長老はいい人だ。歓迎してくれる。お前もあの子供も」

「俺たちは忍者集団に追われている。迷惑をかけるかもしれない」

「しかし今まで何もしてこないんだろ?本当にねらわれているのか?」

「わからない・・。しかしやつらが森を焼き払ったのは事実だ。

・・・それにたまに奴らの気配を感じる」

「・・。この傷は?」

「ああ、これは宿敵の無士蔵にやられたんだ。」

「久利久井 無士蔵(クリクイムシゾウ)・・。」

「ああ、俺も年をとった。あんな若造にかじられるなんてな」

「かじる・・」

「むし坊はちゃんと寝たかな?」言いながら、うつらうつら。

(ぐり太とむし坊と3人でこのまま暮らせたら・・、せめて夜明けまでは3人で暮らしている夢を見ようか)

 

「寝たのか?・・・お前は知らないんだな。俺の気持ちもあいつのも・・」

そっとふとんをかけてやるぐり太。

 

(一緒に暮らすなんて許さない。くり男は僕のものだ)夜の闇に溶けていこうとするむし坊に2人は気づかなかった。

たそがれくり男(お)・友との契り酒

1月25日
1月25日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

謎の刺客に追われながら、安住の地を求めて、旅を続ける、くりおと栗くい虫のみなしごムシ坊。

偶然、立ち寄った村で幼馴染のドングリ族、グリ太と再会する。

彼とはかって、兄弟の契り酒を交わした仲だった。

今宵は招かれるまま、グリ太の家に泊まることに。

 

「じゃあ、生き残ったのはお前だけなのか?くりお」

「いや・・、ムシ坊がいる」

「栗のお前が栗くい虫の子を育てるとは・・喰われないのか?」

「はは、かわいいムシ坊に喰われるなら本望さ」

「しかし・・、栗くい虫にしては、妙に黄色いな。本当に栗くい虫か?」

「何を言う。栗の木にいたのだから栗くい虫さ」

「まあそうか。 それよりもう1度、兄弟の契りを結ばないか?」

「グリ太」

「俺の家で骨をうずめないか? 何、ドングリ村の中に1人くらい栗がまじっていてもおかしくないさ」

「しかし・・」

「2人でそのチビを育てないか?」

友の誘いは嬉しいが、自分は刺客に狙われている身。

くりおの心は揺れる。

 

一方、久しぶりに兄弟の契り酒を酌み交わす2人を見つめる怒りの目。

それはまだ幼い、ムシ坊の瞳だった。

 

                   続く

凄腕の剣客だったくり男(お)は、長年の宿敵、久利久井 無士蔵(クリクイムシゾウ)との戦いに敗れ頭をかじられる。

失意のまま、故郷に帰った彼を、さらなる悲劇がおそう。

焼き払われた森。

たった1人生き残った栗くい虫の赤ん坊。

くり男は栗族の宿敵、栗くい虫の子むし坊をそだてる決心をする。

 

安住の地を求め旅をする2人を森を焼き払った、謎の忍者集団が追う・・。

 

2人に幸せな明日はあるのか!?